野球観術

野球や組織論はいつだって愛情から始まる

拝啓 中島卓也様

ファイターズは後半戦、11試合を戦って、9勝2敗と絶好調で前半戦終了時点で、7ゲームあったゲーム差は1.5差に縮まり、一時は0.5ゲーム差まで肉薄した。

 

特に、ソフトバンクとの3連戦で3連勝したことは非常に大きかった。

オリックスとの2連戦で連勝し、メットライフに乗り込み、壮絶な打撃戦を繰り広げ、2勝1敗とし、西武相手に遜色ない攻撃力を見せつけた。

 

スイープをかけた、7月28日のゲーム。

中盤まで劣勢を強いられるも、4番中田の本塁打などで反撃の狼煙を上げると、3点差で迎えた9回表、クローザーの増田から3番近藤の起死回生のスリーランホームランで同点に追いついて延長戦に持ち込んだ。

残りの投手力を考えると、表の攻撃ではあるものの、ファイターズが有利と考えていた。

 

しかし、10回裏1死1塁から、西武秋山の打球をショートの中島卓が外野方向に弾いてしまい、スタートを切っていた1塁走者の木村が、一気に本塁に生還しサヨナラ負けを喫した。

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正直、僕自身落胆を隠せなかったが、いろんなことが頭をよぎった。

 

実は近藤のスリーランが出たとき、9回表に勝ち越したいと言う思いがあった。

と言うのは、近藤が本塁打を放ち、4番の中田に打席が回る時点で1死走者無し。

仮に1アウトを取られたとしても走者が出れば、代走で出場して7番ショートに入っていた中島に勝ち越しの場面で打席が回ってくることが頭の中にあったからだ。

 

得てして、後半戦の好調は下位打線の繋がりを抜きには語れない。

その中で、ショートでは石井一成がスタメンで使われ、平沼の台頭や横尾にチャンスを与えるために、中島はベンチスタートがほとんどだった。

 

彼がファイターズの遊撃手の不動のレギュラーであることは誰しもが認めるところだ。

2015年には143試合に出場し、ベストナイン盗塁王を獲得し、

翌年の2016年も143試合に出場し、優勝に大きく貢献した。

 

これだけ実績のある選手がこのタイミングで、スタメンを他の選手に譲ることが、どれだけ悔しいことか…

それは、中島がレギュラーを掴むまでに長い時間をかけて努力をしてきたことを考えれば、

想像に難くない。

 

特に中島や杉谷は僕が大学生の時に入団してきて、ファームの試合よく観に行っていた頃に、2軍で頑張っていた選手なので、思い入れがある。

 

昨日(28日)の試合はそんな中島に一打勝ち越しの場面で打席に立たせてあげたいと言うのが近藤の本塁打のあと、真っ先に頭をよぎった。

 

野球と言うスポーツにおいて、守備や代走で入った選手のところに、チャンスの場面で回ってくるケースが多々ある。

本来打席が回ってくるはずのない選手のところに、打席が回ってくることの意味

みたいなものを常に感じながら野球を見ているが、今回はまさにそんな展開だった。

 

そういう場面で野球の神様が悔しさを晴らす一打を打てるチャンスを、そして中島の一打で勝ち越せればチームとしては最高の勝ち方になると信じて疑わなかった。

 

しかし、9回表に中島に打席が回ってくることは無く、10回表に回ってきた打席では三振に倒れ、10回裏に彼にとっては辛いワンプレーを引き受けることになってしまった。(こう言うことがあるから個人を批判するようなことを言ってはいけないなと言うのも感じたが←ここはあえてそこには大きく触れません)

fighters-kingdom.blog.jp

 話を戻して、

レギュラーだった選手が緊迫した場面で、出場することと言うのは非常に難しいことだと、過去にそう言った経験をした選手がみんな口を揃えて言う。

 

昨日のように、劣勢から起死回生のホームランで同点に追いつくような展開で代走そして守備から入っていくのは、特に試合展開が打撃戦だっただけに難しい。

 

栗山監督も「一生懸命やっていれば、いろんなことがある」と言うコメントを残しているように、中島1人を責めることはできない。

 

この後、ソフトバンクに追いつき追い越すためには、中島のようにベンチに居て、いつでもレギュラーを奪い返してやると言う選手が必ず必要になる。

 

石井一成にしても、平沼にしても、1シーズン戦った経験も無ければ、優勝の経験も無い。

ショートの守備に関しても、中島が一番であることに変わりない。(石井や平沼がレギュラーを奪うことは望んでいるが…)

 

そんな中島に最後にかけてあげる言葉があるとすれば、

(土壇場で追いついた試合展開の中で)

「今回はチームの負けを引き受けることになったけどさ、それはセンターラインを守ることの宿命だし、ファイターズの中でそう言う存在(中心の選手)であることが改めて分かったんだし、良いんじゃないかな!?」

「チームが勝つ中で途中から出ること(不慣れなこと)がどれだけ大変かも味わった訳だし、レギュラーだって、今回の負けだって、これからまだまだ取り返せるって思って頑張って!」      

敬具

 

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いろんな色を

ファイターズは後半戦7勝1敗。首位のソフトバンクに3連勝するなど、最高のスタートを切った。

 

僕自身は、交流戦終了までは貯金ベースで、終了後はゲーム差と残りゲーム数をベースに考えるが、今のパ・リーグの状況を考えると、一つも負けられない試合が続いて行く。

 

さてさて、みなさんは“CMYK”と言うのを聞いたことがあるだろうか!?

 

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家庭用プリンターにもある、C(=シアン)、M(=マゼンダ)、Y(=イエロー)。

色の三原色のことだ。

 

今日の話は、ファイターズに新しく加わった選手(=色)!

 

宇佐美真吾

市立柏高校城西国際大を経てドラフト4位で巨人に入団した26歳。

 

ファイターズには“打てる捕手”として期待され、トレードでやってきた。

 

先日(7/8)ZOZOマリンに足を運んだ時、浦野―宇佐美のバッテリーで、浦野の5回1失点の好投と、4番中田翔の2打席連続のホームランで快勝した。

 

実はその時に、気になることがあって球場を後にした。

それは宇佐美のリードだ。

 

球場(レフトスタンド)からではよく見えないが、やけに高低にボールが散っているなと感じていた。

 

それが浦野の制球力なのか、宇佐美の要求なのかは分からなかったが、明らかにマリーンズ打線が打ち損じており、テレビで見ていた知り合いの方にも確認するほど気になる内容だった。

 

同じく7/20(土)の対マリーンズ@札幌ドームの試合でも、同じバッテリーで試合に臨んだ。

結果は浦野が6回無失点で今季3勝目を挙げた。

 

その日のプロ野球ニュースで、解説のデーブ大久保氏が宇佐美のリードを取り上げて、レアードに対する高めのストレートの要求について非常に褒めていた。

日本ハムの優勝のキーマンは宇佐美なんじゃないか!?」とまで言っていた。

 

この試合は、前回のZOZOの観戦のこともあったので、宇佐美のリードを注意深く見ていた。

 

浦野はフォークの握りが非常に深く、落差が大きい分、すっぽ抜けやすく、抜けたボールがスタンドに運ばれるケースが多かった。

 

バッテリーは、デーブ大久保氏が取り上げていたレアードの打席だけでなく、ストレートの高低を非常にうまく使っていた。

 

ファイターズの捕手で、ああいったリードする捕手は居ない。

鶴岡・清水は比較的オーソドックスなリードだし、石川亮は強気なリードと言われるが、同じボールを続けることが多く、変化球を多投させる傾向にある気がしている。

 

浦野の場合は、ストレートとフォークが基本的な勝負球で、スライダーをカウント球にして投球を組み立てて行くが、どうしてもフォークの落差が大きいため、打者はそれに手を出さないように高めに目付をしている。

(=打者は低めのフォークに手を出さないように、ストライクゾーンを高めに設定して、ボールを待つ)

そこへフォークのすっぽ抜けは格好の餌食になる。

 

ただ、宇佐美のリードは、打者が目付をしている高めより少し高いところを要求して、それで空振りを奪いに行ったり、見せ球として有効に使っていた。

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打者はそのボールもケアしようとすると、どうしても早いタイミングでボールを待つことになるため、フォークが多少抜けても、タイミングが外れてくれる。

 

決して威力のあるボールとは言えない、スライダーやカーブも、高めに目付されている分、カウントを取りやすくなる。

 

いわゆる投球の幅が広がると言うやつだ。

 

捕手のリードには正解が無い。

評論家の里崎氏の話を聞いていると、リードって本当に結果論でしか無いなと感じるが、他のチームからやってきて、違う色を出してくれると、投手もまた違った一面が出てくるなと思うし、そういう多くの色が重なって優勝と言う大きな目標に届く気がする。

 

落合博満氏の『采配』の中で、監督の仕事はいろいろな色を使って絵を描いていくようなものだとも述べている。

 

“打てる捕手”と言う期待を背負って、ファイターズにやってきて、打撃ではすぐに結果を出した。

彼の打撃は、ある意味天性の素質のようなものを感じるが、リード面も浦野の良さを前面に引き出していた。

もちろん、リード面は結果でしか語ることができないが、新たな“色”が加わり、ファイターズは優勝と言う目標に向かって進んでいく。

 

恐らく、27日(土)の対ライオンズ戦@メットライフドーム

でもローテーション的には浦野が先発する可能性が高い。

ライオンズに打ち勝つと言う意味では、宇佐美の打力は必要だし、ロッテにそう言う配球をしたと言うデータはライオンズ側にも伝わっていると思うが、逆にその裏をかくこともできる。

 

その試合は球場で観戦する予定だが、浦野のストレートが走っていれば、また宇佐美が面白いリードをしてくれるのではないかと楽しみにしている。

もちろん移籍後初本塁打も期待していますよ(笑)

 

いろんな色でファイターズの野球がより鮮やかになることを祈って今回の更新とする。

 

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どくしょかんそうぶん その2 ㊦

 

前回の続きです。

 

saiyuki6.hatenablog.jp

 

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前回の最後に、今回の更新はティーチングの側面から更新をしたいと言う締めをしたが、やはり本の趣旨から言って、やはり“参謀の条件”について触れなければおかしいだろうと言うことで、“参謀の条件”を軸に最後の更新をしていこうと思う。

 

“参謀の条件”として、橋上氏が結論付けているは、

 

参謀は柔軟な発想の持ち主で無ければ務まらない

 

と言うことだ。

 

これを見た時、僕自身がっかりしてしまった…

がっかりしてしまったと言うのは、僕自身が“参謀タイプ”と言いつつ、柔軟な発想の持ち主とは言い難いからだ…

 

そこは本から勉強をさせてもらえばいいと言う発想で読み進めた。

 

橋上氏が歴任したヘッドコーチと戦略コーチの差をこう記している。

 

ヘッドコーチは

「チームを円滑に機能させること」

戦略コーチは

「チームが勝つための戦術を選手に提供すること」

 

ヘッドコーチには監督、各コーチ、選手との間に入って調整役をこなすことも重要な責務となる。

いわゆる、「マネジメント能力」を発揮することで、チーム内で生じそうな軋轢を回避し、目配りし気配りをしなければならない。

 

 

一方、戦略コーチとは

「膨大なデータから、いかに効果的なデータを選手に与えることができるか」

が求められる。

 

としている。

 

どちらにしても、柔軟な発想を持って、状況に応じて知恵や知識を使って、組織を回していることは共通しているだろう。

 

 

自己卑下をする訳では無いが、自分自身が非常に鈍感なところがあるが故に、社会に出てから必要なことに気付くのに時間がかかったこと、それを実践することがなかなか出来ていないことが前提にあるが、

 

物事を俯瞰して見ることの大切さや難しさ

 

を、この本を読み進めていると改めて感じる。

 

僕が一番知りたいのは

 

俯瞰してものごとを見るためには何が必要か

 

と言うことだが、僕自身の欠点と照らし合わせたとき、ヒントになることあったので紹介したい。

 

僕が尊敬して止まない栗山監督の話がこの『参謀論』の中にも出てくる。

 

栗山監督とは、ヤクルト時代、同じ釜の飯を食っただけでなく、選手寮も相部屋だった。当時のヤクルトの寮にはエアコンがなく、しかも個室ではなく2人1組が通例だった。

それだけに栗山監督とは当時、いろいろな話をしたことが思い出される。

 

今でも、球場で会うとあいさつをしたり、話をしたりすることもあるのだが、栗山監督から2つのことを聞かれたことを印象深く覚えている。

 

一つは

中田翔を4番で使い続けるかべきかどうか」

もう一つは

大谷翔平を二刀流で起用すべきかどうか」

と言うことだ。

 

 

この2人の起用に関しては、周りから想像以上の批判の声が栗山監督に届いたそうだ。

 

橋上氏が栗山監督に

「栗山さんがこれでいいと思ったら、それを貫けばいいんじゃないですか?」

と答えたと言う。

そして

「誰もやったことがないようなことができるは、栗山さんくらいしかいませんよ。」

と言うと

「そうか!ありがとう。」と表情が一変したと言う。

(このあとのこの2人の起用については語るまでも無い)

 

僕はハッとさせられた!

 

僕が営業の仕事をやってる時に、「同意を得たいような相談は相談じゃねぇ!」と何度も怒られた。

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それ以来、僕の相談に関する定義が決まってしまっていた。

 

僕の中で、相談には大きく分けて2種類あって、

 

一つは今の話で、「同意を得たい。背中を押して欲しい。」というもの。

もう一つは、ある問題に対して「何をして良いか分からない、または、どうしてよいか分からない」と言う場合だ。

 

僕は、前者を相談として扱うことを間違いと教えてられてきたから、そんな相談を相談として受け止めなかった。

 

この項で、栗山監督の事例を紹介しているのは、監督に必要なのは“確固たる信念である”と言うことをエピソードとして紹介している。

 

栗山監督が良い意味でいかに悩み症なのかは分かっているし、前例のないことをやろうとしているのだから当然“決める係”である監督の心中は穏やかではない。

 

橋上氏も言っているが、栗山監督は中田を4番で使い続けること、大谷翔平を二刀流で起用することは心に決めていたと思う。

 

しかし、その信念を貫くための相談、しかも大きなテーマを、同じ釜の飯を食った橋上氏にしたと言うことは、

 

“背中を押して欲しい”と言う相談も立派な相談なんだ!

 

気付かされた。

 

もう一つは、

“背中を押して欲しい”と言う相談が“相談ではない”と言う決め付け

間違っていたと腹を刺された感覚だった。

 

いわゆる、思い込みが解けた瞬間だ。

 

背中を押すために相手のことを考えて言葉を選んであげられるかと言うことも、相談してきた人に対して必要なことであり、思い込みがいかに視野を狭くし、いかに俯瞰して物事みるための弊害になっているかと言うことに気付かされた。

 

また、僕が相談を受けるときの基本姿勢は

“選択肢を用意すること”

だが、その選択肢を選ばなかったとしても、「なぜ、相談してきたことを実行しないんだ!」と思うことは基本的には無い。

 

それは本人が決めることだし、その選択を自分自身の責任で決断して欲しいと言う思いからだが、橋上氏は(WBC及び巨人の)戦略コーチ時代

「この方法で失敗したら、それは戦略コーチである私の責任だ。」と選手に伝えていたそうだ。

 

そして時には、選択肢を用意せず、「これで行こう!」と言う進言やアドバイスも時には必要なことであると気づかされた。

それで失敗したらそれこそ「全部こっちの責任」になるから、より俯瞰して考えられるようになるし、参謀も時には“決める係”になりうると教えられた気がした。

 

柔軟な発想には、

思い込みを無くし、時には断定的に物事を伝えることのバランスが不可欠だ!

と僕なりに解釈した。

 

 

僕が本当に困ったことがあると、決まって相談をする人が居るが、

必ずと言って良いほど

 

(僕の)悪いところを前提に

 

話をスタートしてくれる。しかも断定的にだ!

 

そこから選択肢を用意することと、

その選択肢を選んだ時に

必要な気持ちをしっかりとした言葉を添えて

背中を押してくれる。

 

こう言う人が近くに居てくれると言うのは幸せなことだが、そう感じてもらえること究極の“参謀論”なのかもしれない。

 

橋上氏自体は選手時代に華々しい活躍をした訳は無いが、プロ野球の舞台で長く現役を続け、指導者として不可欠な存在として、活躍をしている。

 

野球が好きな人、中間管理職で悩んでいる人にはうってつけの1冊だったと思う。

 

3回に分けて更新をしてきたが、ぜひご一読頂けたらと思い、今回の更新としたいと思います。

 

 

どくしょかんそうぶん その2 ㊥

 

saiyuki6.hatenablog.jp

 

前回の読書感想文の続きです。(※長文につき注意)

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前回は、言葉の力で選手を指導するには、寄り添う姿勢、選手を観察し会話をする中で、初めて力を発揮すると言う内容で終わったかな?

←解釈は人によって違って良し(笑)

 

では、実際に橋上氏がどんな“言葉”を使って選手と向き合っていたかを紹介していこうと思う。

 

2012年に巨人の戦略コーチに就任した際に、巨人の選手のレベルの高さには驚かされたそうだ。

その中でも、阿部慎之助の打撃は目を見張るものがあり、なぜ彼がこれだけの技術がありながら、本塁打王打点王、などのタイトルが獲得できないのか不思議に思って、シーズン中に阿部を観察していると、あることに気付いたそうだ。

 

「(阿部が)守備におけるストレスを感じている。」

 

投手が打たれると「打たれたのは俺のせいだ!」とイライラしてベンチに返ってきては気持ちを切り替えることの出来ないまま打席に立つことが多く、このストレスを取り除くことが必要だと察して、

 

あえてベンチでは“野球以外の話”をして頭の中を切り替えさせ、気持ちよく打席に立たせることを意識して声を掛けていたそうだ。

 

この年の巨人はリーグ優勝、日本一に輝き、阿部自身も首位打者打点王を獲得した。

 

この時に橋上氏が“勉強させられた”と記しているのは、阿部のように捕手で4番と言う攻守に渡って背負うものが大きい選手にはストレスの軽減が出来ているかをしっかり見ていることが大切だと言うことだ。

 

同じく、打てる捕手と言えば2019年の前半終了時点で打率ランキング4位になっている。西武の森友哉だ。

彼は投手が打たれてベンチに戻って来ると

「ダメです、ダメです、もうリードはダメです!」と弱気の虫が口をつく。

当時西武のヘッドコーチだった橋上氏は森に対して

「そんなに弱気になったって仕方ないだろう。どんなにいい投手だって、打たれる時はあるんだ。」

「『なぜ打たれたのか』を反省しても、必要以上に落ち込む必要などないんだ」

と激励をしていた。

 

森は捕手として発展途上にある。「ダメだ」と口にしているのは、自分自身に何が足りなかったのかを把握している証拠である。

失敗がわかっている者に指導者が追い打ちをかけるように叱れば、さらにマイナス思考になってしまう。

 

そうなってしまえば、彼の持つ捕手以外の能力、つまり持ち味の一つである打撃にも悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。

そこで私(橋上氏)は森にこう付け加えることも忘れなかった。

「たしかに今のイニングは失点した。でも、その分お前はバットで取り返せばいいじゃないか」

そうやって頭を切り替えさせることを促していたのだ。

 (本文引用)

 

ここで驚かされたのは、何か野球の技術的な話や特別なメンタルケアのようなことをしているのかと思いきや、両選手の様子を観察し、気持ち良く打席に立たせるために、選手の置かれている立場や状況を考え、言葉をかけることで選手の活躍を後押ししていたと言うことだ。(阿部にはあえて野球の話をせず、逆に森には野球の話をしてポジティブな気持ちを取り戻させようとしていた)

 

監督は立場上このような方法で、選手のケアをすることは難しい。

なにせ、スターターや選手の交代、時には2軍行きを告げる立場の人が、試合中にこのような言動をとってしまうと選手のプレーする気持ちに悪影響を与え兼ねない。

 

まさに、橋上氏の名参謀としての力が発揮されたエピソードだった。

 

~言葉が通じる環境かどうか~

 

プロ野球の指導者のコーチングの本を読んでいて大切なことは、“教えないこと”と言うのが共通している感がある。

 

選手をよく観察し、選手自身が考えその手助けをすることが指導者としてあるべき姿で、教えすぎることは選手の成長を逆に妨げてしまうと言うのだ。

 

これはあくまでもコーチングの話で、ティーチングはしっかり教えると言う考えであるため、新人選手(社会で言えば新入社員)にはしっかり基礎を作るための指導は必要だと言う。

 

ここの見極めをすることも指導者としてのスキルが問われるのだと思うが、このタイミングがしっかり見極められていても、時として環境がその“言葉の力”を妨げてしまうことがあると言う。

 

その例に出てきたが、巨人からトレードで日本ハムに移籍して大活躍を見せている大田泰示だ。

 

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大田の能力や経歴についてはあえて触れるまでも無いと思うので割愛するが、

 

(大田は)二軍で結果を出したところで、いざ一軍に上げてみると、三振や凡打を繰り返し、挙げ句守備でもお粗末なエラーをしてしまうなど精彩を欠く場面が多かった。

 

そこで環境を変えると言う意味で16年オフに日本ハムに移籍させたのだが、これが見事に当たった。

(省略)

いったい巨人時代と何が変わったのか。私は大田本人に直接聞いたことがある。そこで返ってきた答えがこれだ。

「自分で考えて、練習に取り組むようになりました。」

彼(大田)が巨人にいたとき、私(橋上氏)は

「もっと自分で考えて練習に取り組まなきゃダメだぞ」

と口を酸っぱく言ってきた。

だが、当時の大田はわかったようなわからないような曖昧な素振りだった。それが日本ハムに移籍した途端、「橋上さんが巨人時代に言っていたことが、ようやくわかりました」と言うではないか。

その真意を聞くと、

日本ハムではコーチから多くのアドバイスをもらうことは一切なくなったので、どんな練習に取り組んだらいいか、自分で考えなくてはいけなくなったんです」

と大田は言った。

 

巨人時代に貴重なアドバイスを数多くもらったが、そのすべてを自分の技術にしようと試行錯誤していた。

「この技術をモノにできなければ一軍で活躍することができない」とまで考えていた。

 

だが、「日本ハムで何も言われない分、自分でやらなければならないんです。それがいかに実になることなのかが、よく理解できるようになりました」と明言していた。

 (本文引用)

 

橋上氏のこの項での真意は、自分で何が必要なのかを考えて練習することの意味、自分自身に責任感が芽生えると言う例で挙げているのだか、僕の捉え方は少し異なる。

 

なぜ、橋上氏が言っていることと、日本ハムがしている指導方法が同じなのに、結果がここまで違うのか?

 

それは巨人と言う環境がその

“言葉の意味”を理解させにくいものにしているのだと…

巨人は常に結果が求められる、ましてやコーチ陣も巨人と言う閉鎖的な環境で現役を過ごし、コーチとして指導に当たっている。

その当時のコーチの指導内容云々では無く、

大田が置かれていた立場や巨人の環境が大田の成長を妨げていた。大田はコーチの言うことを聞けば1軍に上がれると言う感覚に陥ってしまった部分もあったのではないか…

 

環境の差と言う側面においては、僕も似たような経験がある。

同じ業界で転職をした際、転職前の会社はルールがほとんど無い所謂“無法地帯”の環境だった。

基準があいまいなため、上司としては部下の指導に困る事が多々あった。

その分、自分自身の言葉で何かを伝えることはやりやすかった。

逆もしかりで、基準が無いため本社の人間からいろんなことを言われ混乱することが日常茶飯時だった。

 

しかし転職先では、ここまでするかと言うくらいルールが厳格で、年に1回そのルールのテストがあるくらいしっかりとしたマニュアルを持っていた。

上司もマニュアルを盾にして指導にあたる分、変な曖昧さを残さなくて良い分、考えることを一切しなくなる。

部下もとりあえず、ルールに沿って仕事をこなせば良いと言うことになるが、実際の現場では幅が無いためどうしても無理が生じることもある。

 

これはどちらが正解かと言えば、後者(転職先の会社)であることは間違いない。

 

しかしルールが無い中で、ある程度自分の中で基準を作って、試行錯誤を繰り返してきたことは、必ず身になっていく。

僕自身の話で恐縮だが、今年は長梅雨で気温もすごく低いが、通常はこの時期になると、スーパーやコンビニに並ぶ、冷やし中華や、冷やしそばがおいしい季節になる。

 

しかし昨年は、ゴールデンウィークに30度を越える日が続き、いわゆる涼味と言われる商品(=冷やし中華や、ざるそば等々)の発注がイレギュラーな形で必要になった。

 

転職前の会社では、本社から「涼味の発注を増やせ!」と通達が来る。

(この会社は本社の通達に従っても結果や見栄えが悪ければ店の責任)

しかし、転職先では情報伝達ルートがしっかりしていて、

冷やし中華は通常の〇倍、ざるそばは〇倍、発注しなさい。」と通達が来る。

(この会社は本社の通達に背くことは基本的には許されず、店の責任にされることは、ほぼ無かった)

 

転職先でこのゴールデンウィークに、ある問題が起きた。

この通達が来たのが、

僕の上司が休みで発注期限がその日だったこと、

そして発注指示の数量がセオリーに大きく反するような数量であったこと、

その数量を決めた情報伝達者に相談をしたくても理由があって相談することが不可能だったこと

要はこの情報伝達者が会社のマニュアルに従ってきたが故に、イレギュラーが起きたときに対応できなかったことを、そのまま指示に従って発注をしなければいけなかったのだ。

(この人の名誉のために言っておくと、仕事も早く、若くして出世しており、人間的にもしっかりしていた。)

 

結局、僕の裁量で、数量を訂正し発注をかけた。もちろん副店長にはその旨の報告をして帰宅をしたが、次の出勤の時に大目玉を食らったのは言うまでも無い…

自分で言うのもなんだが、発注数量は適正だったし、基準が無い中で取得してきた技術はやはり正しかった。

 

正解より、指示に従うことが優先される組織では、自分で考えることをしなくなる。

この会社はこういったマニュアル化が業績を支えていて、他社では到底真似できないレベルにある。だから間違っていると言うことは言えないのだ。前述したがこの業界では正解だと思う。

ただ、社会人として広い意味で個々の能力を伸ばしてあげようとしてかける“言葉”が通じる環境ではないと感じた。

 

環境が言葉を左右する

ということは仕事だけでなく、人間関係における全てにおいて言えることでは無いかと思う。

学校、サークル活動、仕事、恋愛、結婚生活、人間が人と交わる時に使われる“言葉”は環境によっては、なんの意味もなさないこともあり、大田泰示のように、環境が変わることでその意味が分かる事もある。

 

 

阿部と森に対する声のかけ方

大田泰示の環境が変わることでの言葉の伝わり方

 

今回紹介した2つの例は、参謀として必要なことが非常に凝縮されている気がした。

 

コーチングとして、教え過ぎてはいけない。

その中で、選手が置かれている立場や性格、そして大田のように環境の要素まで考えて、“言葉”を使って指導をしていくこと。

 

これを熟知し、指導者として実績を上げてきた橋上氏はやはり、“名参謀”なのだと思う。

 

次回はコーチングの側面と言うよりも、ティーチングの側面から、橋上氏の記述と自分の考えを更新しようと思う。

 

長文にお付き合い頂き本当にありがとうございました。

 

親子ゲーム(ファームレポ)

今日はオールスター前の変則日程と、自分のシフトの変則日程が重なり、

13:30試合開始のロッテ浦和球場から18:15開始のZOZOマリンを回す、

いわゆる親子ゲームをやってきました。

(両ゲームともロッテ主催の対ファイターズ戦です!)

 

2019年7月8日 @ロッテ浦和球場

千葉ロッテVS北海道日本ハム

試合時間 2時間51分

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E

日 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1  4  1

ロ 0 0 0 0 3 2 1 0 /  6 10 1

 

勝 古谷

負 柿木

 

<戦評>

ロッテは0-1でビハインドの5回裏、3番手柿木から1死満塁のチャンスを作り、4番の安田が走者一掃の左越適時二塁打を放ち逆点に成功すると、効果的に追加点をあげ10安打6得点で快勝。日本ハムはロッテ4投手を前に散発4安打で相手エラーによる1得点のみ。投打に精彩を欠く内容となった。

 

<今日のMVP>

ロッテ2番手で登板した土居(どい)!

6・7回の2イニングで打者6人に対して無安打2三振と好投。チームが逆転した直後、連続三振を含む力投で流れを呼び込む投球。

高卒1年目の選手で将来が非常に楽しみだと感じた。

 

<今日の独り言>

 

上原

細かいコントロールが無くファームの選手相手にも、力で押す投球が出来ず。結果的に無失点に抑えるも内容は今一つ。2四球が絡み、ライトの岸里が犠牲フライの打球を好返球で本塁を刺さなければ、大量失点の可能性もあっただけに残念な内容。

 

柿木

藤原との大阪桐蔭対決が実現するもレフトにヒットを打たれ逆転のきっかけを作られる形に…

1球1球のボールの質は良いが、甘いボールをしっかり弾き返されていた。

コントロール、ボールの質を更に上げて、1軍の舞台へ上がれる日を目指して頑張って欲しい。

 

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バーベイト

ヒットで許した走者に代走が送られると(和田と言う育成選手に)、簡単に二盗・三盗を決められあっさり犠牲フライを打たれる。投球以前にまずクイックと牽制球をしっかり投げられるようになることをオススメします。

 

今井

今日はサードでの出場。3打席とも得点圏の場面で回ってくるも、ファールで追い込まれ3本の内野フライをあげてしまうなどやってはいけないバッティングを連発。

ファームが勝利優先ではないにせよ、チームの攻撃に水を差す内容で日のワースト選手

 

 

姫野

フェンス直撃の飛球に対しても、捕球まで紙一重と打球の追い方は素晴らしかった。守備面では非常に光るものを感じた。

バッティングは投球に対して前に出されてしまうため、プロのレベルには程遠いが、広い札幌ドームでは(北広島ではどうなるか分からないが)守備範囲の広さは武器になるので頑張って欲しい。

 

難波

ショートで出場し、内野の中心として声をしっかり出して、ポジションの確認も積極的にやっていた。第一打席のチャンスの場面でも逆方向に痛烈なショートへのライナーを放つも野手の正面。野球への姿勢や、誰よりも練習をしてきたのが分かるような動きをしていた。今日は淡白な負け試合の中で、そんな難波にファイターズでのMVPをあげたいと思う。

 

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藤原

前回観たときよりも、ストレートにも変化球にもしっかり踏み込めていた。今日は2安打し、柿木との対決でも安打を記録した。やはり大阪桐蔭の4番は素質が違うらしい。

 

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安田

逆転のタイムリーでチームの勝利に貢献するも、1回に何でもないショーフライを落下点に入りながら、落球(記録はエラー)し走者の生還を許す。2回にも送球エラーをするもファーストがカバーし走者の生還を本塁で阻むプレーがあった。走塁でも犠牲フライの場面で本塁憤死。スタートやスライディングいかんではセーフになれるタイミングだった。

この内容では殊勲打もMVPはあげられない…

 

茶谷

前回のレポで、ロッテ敗戦ながらのMVPの選手。今日も2安打し、守備も安定していた。

1軍のショートが安定しないので、支配下登録して、使ってみても面白い存在だと思う。

 

 

<今日のハプニング>

ファイターズの守備練習でセンター姫野が三塁にダイレクト返球したボールが逸れて、アップしているロッテの選手の輪の中に着弾。

大きな声で謝っている姿が面白かった。練習中のケガは残念以外のなにものでもないので以後気をつけましょう!

 

 

<感想>

今季ワーストの試合内容。

序盤は失策の応酬。

ファイターズは(先発)杉浦-上原の後に出てきた投手が連打を許し、野手も高卒1年目の2投手に反撃の糸口をつかむことすらできず。

もちろん特に2軍だし、いつも好ゲームを演じることが出来ないのは重々承知しているが、1軍レベルの選手はそれ相応の質を、入団間もない選手は自分の特徴を9イニングの中で1回は見せて欲しいと言うのがファンとしての願いだ。

なので、今日のファイターズのMVPを選んだ基準は、特出する結果(プレー)が無かったので、姿勢を評価して難波を選んだ。

 

ロッテは中盤の集中打は見事だった。しっかり叩いた打球がことごとくフェンスに直撃。

しっかりスイングすることの大切さを改めて感じさせる攻撃だった。

 

そ し て 今 回 は

外環自動車道が開通したことで、親子ゲームをスムーズな移動で実現。浦和球場からZOZOマリンまで車で50分と快適な移動。

あとは、知り合いの方から、望遠カメラは動くものをたくさん撮って3~4カ月で使いこなせるようになると言う助言を頂いたので、親子ゲームでそれを実践してきました。

幸いにして1軍は勝ちゲームで内容も非常に面白い試合だったので、非常に満足しております(笑)

やっぱり1軍は勝たないとね!!

 

そんな親子の試合の一部の写真を公開して今回のファームレポとしたいと思う。

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トンボをかける紺田コーチと飯山コーチ

 

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青木球審の指差しストライクコールと田宮捕手

 

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戦況を見守る栗山監督と金子コーチ

 

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ピンチの場面で井口に駆け寄る、清水と中島卓

(後ろに井口監督が不敵な笑みで写ってる(笑))

 

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最後のアウトになる飛球を目で追う守備の首脳陣と栗山監督

どくしょかんそうぶん その2 ㊤

久しぶりに出会いました!

最高の1冊!!

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“わんぼーろん”ならぬ“さんぼーろん”

著者の橋上秀樹氏はファイターズにも在籍し、左投手が出てきた時の“右の代打”として活躍。

僕が子供の頃は、左投手が予告先発の時にしばしばスタメンで出場し、現在「敵の野手の間を抜く気合の決勝打~♪」のチャンテが個別の応援歌で使われており、歌うのをすごく楽しみにしていた。

 

話は逸れたが

『参謀論』

参謀=高級指揮官の下で、作戦・用兵などの計画・指導を受け持つ将校。

   転じて一般に、人を支えてあれこれ策略を立てる人の意。

 

ちなみに“謀(はかりごと)”=ものごとがうまくいくように前もって考えておく手段。計略。もくろみ を意味する。

 

野村克也氏・落合博満氏・栗山英樹氏 おもに監督の本を愛読しているが、実際に僕自身は根っからの“参謀タイプ”で平成の野球界で“The参謀”であった橋上氏の著書をずっと待ちわびていたのだ。

 

字の如く決して良い印象では無い“謀(はかりごと)”をいかにもしそうな顔ですよね(笑)

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僕も仕事を始めとして集団の中においては、優秀なトップであればあるほど、参謀として力を発揮するタイプであり、大げさな話だがこの本の各章、各項に対して一つ一つコメントをしたいと思うほどの内容だった。

 

僕の性格が“腹黒い”と思われようとも、組織のため、またそのリーダーのため、もしくはそれが個人に対する場合もあるが、このブログのサブタイトルの通り、そこには“愛情がある”からと言うことを読み取って頂けると幸いであるが、いろんな項目に分けて感動や自分の実体験を書いていきたいと思う。

 

 

~鉄拳制裁から言葉の力へ~

 

体育会に蔓延る鉄拳制裁。僕も社会人になって何度か、いわゆる鉄拳制裁を受けたことがある。

橋上氏も先輩から鉄拳制裁を受け、選手(部下)にも鉄拳制裁を見舞ったことがあると記している。

西武の1軍コーチに就任した際は、球団関係者から「選手を指導する際には『言い方』に気を付けて下さい」と言われたそうだ。

 

実際に手足を出さなくても、言い方次第では、言葉の暴力として選手が受け取ることがあると言うことを、西武の球団関係者は分かっていたのであろう。

デーブ大久保の件もあったしな…)

 

一般社会にも野球界にも自分の経験を部下に押し付けて暴力や暴言を吐く上司は少なくない。

これが今やパワハラに該当し、上司と部下の関係において大きな問題になっている。

橋上氏も同じ認識だった。

 

選手をしっかり見る観察眼に加え、自分の経験だけに寄らない、言葉の力を使って、指導をしなければ選手自身が納得してその助言に耳を貸さない。と言うことを西武でのコーチ経験、現在のヤクルトの2軍チーフコーチに就任する際に受講した研修で身を持って感じたと言う。

 

僕がもっとも賞賛したいのは、昔の考え方から現在の考え方にシフトすることの出来た、橋上氏の頭の柔らかさだ。

自分が受けた経験は大概の人は、自分もしてしまうものだ。

僕も決して例外では無かったのでそれは痛いほど分かる。

怒鳴られたり、嫌味を言われることが嫌だったにも関わらず、部下に同じことをしてしまったことは1度や2度では無い。

僕自身、年齢の下の女性社員に向かって、物を投げつけたり、怒鳴りつけて周りの物を蹴り飛ばしたり、今考えれば恥ずかしい話だが、そう言う経験が、結局は反発招くだけと言うことを逆に教えてもらった気がする。

(この社員が別の店舗に異動した先で、自分のことを怖いと言っていたそうだが、その異動先で僕も働く機会があって、その職場の人たちに(そんな風には見えないと)驚かれたが、それは僕自身が変わることができた何よりの証だと感じた。)

 

それでも言葉の力で何かを理解してもらうことはとても難しい。

この“理解してもらう”と言う表現もとても大切で、“理解させる”ではやっぱりダメなのだ。

縦割りの社会において、こんな優しい表現で良いのかとよく言われるが、著書の中にこんな記述があった

 

『「今の時代の選手に寄り添った方がいい」と言う思いが決定的になったのは、辻発彦監督が(西武の監督に)就任した2017年シーズンからである。辻監督に関しては、「選手に対して厳しく指導にあたる人」と言う噂はすでに耳にしていた。どちらかと言えば、私(橋上氏)の考えに近しい部分があるのではないかと思っていたが、実際に選手との接し方を見ると、辻監督も選手に寄り添う姿勢で指導をしていたのである。』

 

『不振が続いている選手に対しては、辻監督は(選手を)西武第二球場に呼び出し、自ら打撃投手を務め選手の打撃フォームをチェックすることもあった。「こちらが見ておかないと、何がどう変化したかが分からない」と言うのがその理由だった。「ダメだったときにどう対処すればいいのか」を選手とお互いに話し合う。そうすることで欠点を修正していく。(略)私(橋上氏)も辻監督から自分自身を変化させることをまず求められた。』

 

何かを指導するにせよ、選手に寄り添うと言う態度を見せることで、初めて言葉の力が発揮される。指導者(上司)が選手(部下)のことを見ていなくて、小手先の言葉で選手を動かそうとしても無理だと言うことを、辻監督は身を持って示した。橋上氏もそのことを痛感し、指導に生かしたと言う。

 

僕も上司の立場になった時「下っ端の時に散々使われたのだから、部下を使って仕事を完遂しなければいけない。」と言う考えはすぐに消さなければならなかった。

僕が居る業界は慢性的な人手不足で、仕事のやる気がある人なんて入って来ないのだ。

 

お世話になった上司に言われたのは「これ以上今の環境が良くなることは無い!お前が良くすること以外にどうもならないぞ!」と

 

結局、そういう人に寄り添って行くことでしか解決方法が無いのだと気づかされたのだが、それも上司(橋上氏の立場で言えば辻監督)が身を持って示してくれたことが何より僕の考えを変えてくれる手助けとなった。

 

先ほど登場した女性社員に対しても、その子の“趣味の話”をしたり(分からなければ調べる)、して、その例え話を仕事の中に混ぜて行く。時には、手を抜くことを許したりしながら、寄り添う中で初めて言葉を使う段階になってくる。

“理解してもらう”と言う表現はそんな僕自身の経験からも、どうしても必要な言葉の使い方になっているが、その背景には本音からそう思わなければ、若い人とは仕事ができないと言う苦い思いがあったからだ。

 

この本のサブタイトルにもなっている

プロ野球最強コーチの「組織と人を動かす」言葉~

 

も中身を読んでいくと、言葉にたどり着くまでに必要なことがたくさん書いてある。

 

次回はそんなプロ野球選手に伝えた言葉について更新をしていこうと思う。

 

どくしょかんそうぶん その1

 

スポーツ紙の記事に、西武:辻監督の本の重版が決定したと言うのが載っていて、過去にこんなブログを書いたこともあって

 

saiyuki6.hatenablog.jp

読んでみようと思い、せっかくなので読書感想文としてアップしようかなと…

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僕の辻監督の印象については、過去のブログを参考にしてもらえると幸いですが、

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のチームで現役をしている印象しかない。

 

YouTubeでこんなのがあったりして、すごい選手だったという人づての情報しかない。

https://www.youtube.com/watch?v=dqpTSAjFUCI

 

率直な感想は、

栗山監督の本に比べると格段に読みやすく簡単に書いてあるなと。

 

 

大まかに言うと

過去に、選手・コーチとして仕えた監督の特徴やその長所を生かして、今の監督の仕事に生かしていると言うこと。

 

今の若い人に対してどう接するかを今の西武の選手に当てはめ、ビジネスマン向けにも大切なことを訴えていると言うこと。

 

一生懸命に自分自身が取り組んだ経験が指導に生きると言うこと。

 

辻監督自身がネガティブな性格で、そう言う面で苦労してほしく無いと、コーチ時代から意識して指導をしてきたと言うこと。

僕が一番共感できたのはこの部分だったのだが…

 

西武ファンならずとも非常に分かりやすく書いてあるので、読書初心者には非常にオススメです。

 

辻さんが日本通運から26歳で西武に入団した時の監督が、広岡達郎監督で、その後森祇晶監督の下でプレーしたのは知っていた。

僕がこの本を読んで意外だったのは、森さんの管理野球のイメージが強かったが、広岡さんの管理野球に比べると、非常に自由な雰囲気で真逆の監督だったと書いてあったことだ。

 

その後、ヤクルトに移籍して、野村克也氏のもとで現役を続け、中日で2軍監督そして1軍のコーチに就任してからは落合博満氏の下で、この2人の下で得た経験が大きかったと記されていたが、この2人の本は、それこそボロボロになるまで読んだので、その内容が非常に要約されているなと感じた。

 

森さん、野村さん、落合さん、に共通しているは、時代の流れをしっかり捉え、選手との関係を作っていることだ。

いずれの監督もいわゆる“時代錯誤の古い部分”を持ち合わせながらも独自の理論でその時代にマッチする組織を作り上げている印象がある。

 

辻監督はそれを今の西武で実践して、昨年はリーグ優勝を成し遂げた。

 

辻監督に関するブログの標題にもなっている“涙の理由”も、ちゃんと記されていて、自分の予測は大方当たっていた(笑)

 

本ではサラッと成功体験として書いてあったが、上司として部下のダメな部分をどう考えるかについては、非常に考えさせられる内容であった。

 

人間だから感情に任せて怒りたくなることもあるし、我慢をしていても雰囲気でそれが伝わってしまうこともある。

 

今はサラリーマンから離れているが、僕が上司の立場にあるときは、前提として「自分には能力が無い分、人の長所が大きく見えて、短所には寄り添うことができる。」と言うのがあった。

 

それでも自分に意に反してできないことがあると、怒りを押し殺すことがなかなか出来なかった。

経験をしていく中で、そういったことが出来るようになると、この本にも書いてあったが、経験を積み重ねていくと、次のステージが待っていて、またそれに悩むことがあるのもまた事実だ。

 

「そんな時は部下と一緒に成長していけばいい。」

辻監督の人柄が出ている素晴らしい1冊だと思う。

 

 

そんな上司像の1人としてシンプルに書き記されたもので、ブログを読んで、この本を手に取ってくれる方が1人でもいれば幸いである。