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2018年ファイターズのドラフトは成功だったか?

 

2018年のドラフトの総評については前回の更新で記述したが、ファンとして20年以上チームを見続けてきた筆者としては、ファイターズのドラフトの結果について、コメントしないのは物足りないので、ファン目線で少し辛口にドラフトについて書こうと思う。(※やや長文につき注意)

 

◇補強ポイントは◇

今年の補強ポイントは中期的な部分と、短期的な部分で分かれると思う。

中期的な部分については、根尾の指名にも表れていたように、二遊間の補強だ。

現在のショートは中島卓がレギュラーと言って異論は無いと思うが、2番手の選手が居ない。

筆頭は石井一成だが、昨年の守備を見ていると複数ポジションをこなす中で、スローイングに弊害が出てきた感は否めない。本来守備の良い選手だが、敗戦に直結する送球エラーを何回か経験したことで、イップスになりかけているのではと疑ってしまう。

太田賢吾もバッティングを考えると、レギュラーとしては物足りない。

ショートで入団した、渡邊諒はイップスから復活してセカンドを守っているので、打力のことも考えると、ショートへ戻すことも難しい。

平沼もショートに挑戦しているが、足の運びが到底内野手とは言い難い。打力と走力を生かすためにも、他のポジションでレギュラーを掴んで欲しい。

難波が最も後継者に近いが、二番手ではない。

現状では、二番手からの後継者を二遊間で育てるのは難しい。

 

前述の通り中島卓の守備力が落ちる前(どうしても年齢と共に肩の衰えには逆らえない)に後継者を作りたい。

まして、今年はセカンドが固定できなかったこともあり、中期的にも短期的にも二遊間は必要だ。

 

短期的には、先発の頭数が足りない。今年のシーズン前からの懸念事項は払拭されなかった。

上沢とマルティネスが急浮上したが、有原、高梨、加藤のマイナスを考えると、頭数が足りない。

特に、左の先発タイプが居ない。

一昨年、ドラフト1位で獲得した堀瑞輝は先発を経験するも、後ろのタイプに見えて仕方ない。

上原も今年4勝するも、信頼を得たとは言い難い。

どうしても、短期的にチームの編成上、先発の左投手が必要である。

 

◇根尾を外して獲得したのは…◇

大本命の根尾くんは4球団競合の末、外れてしまった。さすがの優しい夫(=木田GM補佐)も2年続けての強運は無かったか…

その悲運を挽回したのが、ファイターズドラフトの大方針と戦略だった。

甲子園を沸かせ、かなーしフィーバーを巻き起こした、金足農の吉田輝星を1本釣り。

各球団、一巡目が高校生野手に集中し、その抽選を外した球団が、立命館大の辰巳に集中。

見事、今年一番の選手を獲得した!

 

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栗山監督本当に嬉しそうでしたね(笑)

◇吉田輝星は本当に1番の選手?◇

ファイターズは今まで、数々のタレント選手を獲得している。ダルビッシュ、中田、斎藤佑、大谷、清宮とそーそーたるドラフト1位が入団している。

ファイターズファンの悪夢は、1つ斎藤佑の二の舞にならないかと言うこと。

人気先行型であることは共通しているが、異なることが2つある。

1つは、彼が甲子園準優勝投手であること。そして、U-18のワールドカップでコンディション不良で思うように投げられず、悔しさを味わっていること。

 

2006年、早稲田実業VS駒大苫小牧の試合を思い出して頂ければ多くを語ることはないかと…

その悔しさをバネにした、田中将大楽天に入団し、1シーズン24勝0敗と言う神がかり的な成績を残し、メジャーへ旅立っていった。

一方の斎藤佑はである…

性格的な問題もあるだろうが、吉田自身も今の実力ではプロの世界で通用するとは思っていない旨の発言をしているし、そこが根本的に斎藤佑と違う。

きっと正しい努力をしてくれるだろう。

 

2つ目は、素人目であるが、実際に2人の投球を生で見た感想だ。

斎藤佑の高校時代の投球はテレビでしか見ていないが、吉田と同じく、地を這うようなストレートを武器にしていた。基本的には低めへの制球力を武器にしていたが、吉田の甲子園での投球のように、ストレートだけで球速差を付けたり、高低の出し入れは出来ていなかった。

 

万を持して、プロ入りした斎藤佑は開幕ローテーションを確約されていたが、東日本大震災の影響で、先発が延期になり、ファームの球場で近くから見る機会があった。

(あの時は、普段人の少ない戸田球場に、全国からおば様軍団が押し寄せて大変だったな…)

その時の感想は、「なんだこの棒球は…これがドラフト1位か…」

大学での故障が影響したのか、甲子園優勝の時の球筋は何処へ…

 

それに比べ、甲子園で見た吉田のボールは生きていた。

ストレートがミットに収まるのが、感覚よりワンテンポ速く見える。

そのままプロに入ってきて、プロ仕様のトレーニングをすれば、少なくとも斎藤佑のようになることは無いと信じている。

課題は変化球だと評されているが、彼の器用さがあれば克服をしてくれるだろう。

何よりも実践向きな投手であり、負けん気の強い性格はまさにプロ向きの投手である。

必ずや1番の選手であると証明してくれるだろう。

 

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◇甲子園のスター◇

今年のファイターズは上記の吉田を含め、甲子園のスターを4人獲得した。

そのうち、4人とも生で見ることができた。

高卒の選手が来年のシーズンにすぐに活躍することは無いと考えると、将来どう言った選手になるかを踏まえてコメントしていこう。

 

◇逆境に強いエースで4番◇

2位で獲得した野村佑希内野手(=花咲徳栄高校)

夏の甲子園観戦、70試合以上の経験、10年目にした初めて今年、地元埼玉県のチームを観れたと言うことで、感激も一入。

四番投手で出場した野村は、鳴門高校に4点を先制されるも、打っては4打数2安打3打点1本塁打。投げては9回7安打5失点完投勝利。

 

ファイターズは恐らく、野手として使うことになるだろう。

この試合のレフトへの本塁打の打球も凄まじいものがあった。金属バットとは言え、高校生の飛球とは思えなかった。

フライボール革命が叫ばれ、いち早くこう言う趣向を取り入れるファイターズにあって、打球に角度の付く選手を指名するところがさすがだなと、指名が発表されたときに思った。

もしかしたら、4番清宮、5番野村と言う最強クリンナップになるのではと本気で期待している。

フライボール革命については、勉強したらアップしようと思います…

 

武田久の血(知)を受け継ぐ剛腕投手◇

3位で指名した生田目投手は最速155km/hの右腕。スポーツ紙に書いてある知識しかないが、日本通運からの指名と言うことで、武田久の関係で指名に至ったとすぐに思った。

プロから社会人のチームのコーチとして赴任した武田久プロ野球で得た知を得た投手であることを考えると、即戦力として期待大なのではないか。

 

◇身体能力は育てられない◇

4位で指名したのは万波中正外野手(=横浜高校

彼も甲子園で、対 愛産大三河戦を観戦。

この試合四番で出場していた万波以外は先発全員安打。全く良いところなく終わった。

そして、金足農業に敗退した試合同様、淡白な打撃が目立った。

大概、こういった選手は指名がかからないものだが、ファイターズは指名に踏み切った。

かの、ノムさんこと野村克也氏は「遠くに飛ばす力、早いボールを投げる力、足が速いことは育てることが出来ない。」と言うことを常々言っているが、まさにその典型例で、彼はこの3つに力は持っている。如何様にも化ける要素があると踏んだのだろう。

雑な表現だが、野球が上手になればきっと戦力になってくれるだろう。

(個人的にはここで横川を指名して欲しかった…)

 

◇甲子園の敗戦投手◇

5位:柿木蓮 投手(大阪桐蔭高校

いやいや甲子園の優勝投手でしょ!?

その通りです。春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭のエースであり優勝投手です。

昨年の夏の甲子園の対仙台育英戦、今年キャプテンだった中川君が一塁ベースを踏み損ね、その後、劇的なサヨナラ負けを喫したそのマウンドに居たのは他でも無い2年生柿木投手だった。

実は、柿木は今年の甲子園で観た訳では無く、昨年の明治神宮大会で見ることが出来た。

この時は先発好投の横川(読売=ドラフト4位)をリリーフして4回2失点の投球だったが、その時に比べ、今年の夏は球速やボールの切れは格段に上がっていたと思う。

いきなりエンジン全開と言うタイプではないところを見ると、先発タイプでスタミナも十分な投手だ。

前年の悔しさをバネにし、着実に成長しているパワーピッチャーとして、もしかしたら最初は吉田より成績を残すかもしれないと思っている。

同じ大阪桐蔭の根尾や横川よりも下位指名であったが、その悔しさもコメントの中で隠すことは無かった。

そう言った意味では即戦力と高校生としては一番楽しみな存在だと踏んでいる。

 

◇高校生捕手の魅力◇

ファイターズは最近高校生捕手を獲得する流れになっている。

近藤、清水、石川亮、郡、としばらく高校生捕手が続いている。やはり、捕手と言うポジションの特性上の問題なのか、今回も甲子園出場経験の無いが高校生捕手を獲得した。

どうやら、アマチュアでは捕手を育てる指導者が不足しているらしい。

中途半端な指導の下で育った捕手を即戦力候補で取るより、ポテンシャルを買って育てた方がリスクが少なく魅力的なのだろう。

田宮裕涼(ユア)(=成田高校)、右投左打で好打者の捕手。身長は174cmと捕手としては小柄だが、かつてファイターズにいた、今成のようなイメージなのか…

鎌ヶ谷に行って偵察してこようと思います。

 

◇北海道枠の即戦力サウスポー◇

いつもお決まりの北海道枠です。

福田俊(スグル)(=星槎道都大)

(こんな大学聞いたことなかったな…福祉・デザイン系の大学で小規模と言うこと以外は特段調べようがなかった(笑))

上記でも記述した補強ポイントのサウスポー。

この投手も、大学同様に全く情報が無い(笑)

大卒で獲得しているところを見ると即戦力なのか…

経歴的にもタイプ的には宮西と同じタイプのようです。

(歯切れが悪い…)

 

◇今年のサプライズ◇

今年のサプライズは何と言っても、育成選手の獲得です。

BCリーグ富山GRNサンダーバーズから海老原一佳外野手を指名。

情報筋によると、左の中距離打者で(スポーツ紙では長距離砲と報じています)、タイプ的には、浅間や谷口と被るようです。

この選手が支配下登録されると外野の競争はさらに激化します。

岡大海を放出したように、海老原は大卒からのBC入団(創価高―創価大=創価枠ww)なので谷口あたりが、また放出されるのではないかと…

 

◇総じて◇

ここまで各選手で知っている限りのコメントをしましたが、表題にもあるように、今年のドラフトは成功だったのか?

1つはファイターズらしさを貫けたと言う意味では大成功だった。

2つ、補強ポイントと言う意味では物足りなさを感じる。

3つ、他球団との比較論では勝てたのではないか。

 

僕個人的な心残りは、大阪桐蔭の横川を獲得して欲しかった。未完成の投手だが、左の大投手に成長する予感がする。日本でずっとプレーすれば200勝も夢では無いとさえ思う投手だ。

読売に行ったと言うことで、活躍できなければ、市川、大田泰示、公文のようにファイターズに来ていただければとひそかに思ってます←小声

 

育成のチームなので、なんとも言い難いが、大卒か社会人の内野手を1人獲得してもよかったと思う。それはレギュラー選手としてよりも、今の若い内野手を刺激すると言う意味合いでだ。ライオンズの源田のように、レギュラーになってしまえば戦力な訳で。

田中賢介が長く守ってきたポジションで、後釜が出にくい中で、競争が鈍化しており、競争をあおる意味でも獲得をして欲しかった。

 

来年の鎌ヶ谷は報道陣や吉田ファンで大変なことになりそうだ…

昔からのコアなパ・リーグファンの居場所がまた一つ無くなってしまう気がして寂しいが、注目されることは良いこと!頑張って視察に行こうと思う。

 

ドラフトの成功か失敗かは5年後、10年後にしか分からない。

10年後に1軍のレギュラーとしてやっていけるのは、全球団で指名された選手の十数パーセントと厳しい世界。

もちろん指導者の手腕も問われる。

 

今年指名された選手が活躍すれば、ファイターズの未来はしばらく明るい!