野球観術

野球や組織論はいつだって愛情から始まる

リスペクト(=敬意)をもってしでかす

最近、栗山監督シリーズばかりですいません…

 

ファイターズファンのみなさんは昨年のクライマックスシリーズの悔しさをまだ覚えているだろうか?

 

優勝を逃し、3位から日本一を目指して福岡に乗り込み、エースの上沢を立てた。

近藤のホームランで先制するも、あれよあれよと言う間にデスパイネ満塁本塁打を浴びて、シリーズの流れを完全にソフトバンクに渡してしまった。

 

3戦目まで持ち込んだものの所沢を経由して、札幌に帰ることは叶わなかった…

 

標題の「リスペクトをもってしでかす」と言うのは、優勝チームの西武、クライマックスシリーズファーストステージで戦うソフトバンクに対して、敬意を払いどんな結果でも受け止める覚悟が、下位チームの使命だと栗山監督が著書の『稚心を去る』の中で書いている内容だ。

 

その項目の中で、「奇襲は、普通に戦っていたら勝てないから奇襲なんだ。」と言う、野村克也さんの言葉を引用していて、

「大博打を打ってもいいから“しでかしてやる”と言う気持ちで戦った方がきっと面白い試合になる。」

栗山監督はその気持ちでシリーズに臨んだ。

しかし、ソフトバンク相手に“しでかす”ことは出来なかったが、この考え方は野球だけでなく仕事や組織論に通じることでもあると思う。

 

 

みなさんはゴロGOのギャンブルスタートと言う言葉をご存じだろうか?

野村克也氏がヤクルトの監督の時に西武との日本シリーズの際に、奇襲作戦の代表として挙げるものだ。

日本シリーズでの緊迫した試合。

状況は1死満塁。三塁走者:広澤克己選手がボテボテのゴロでホーム封殺されたことがきっかけで、ゴロが転がった際にベンチから「ギャンブルで良いからスタートを切れ!」と言う指示を出すことの重要性を強く感じたと言うのが発端で、ギャンブルスタートと言う言葉が生まれた。

 

これは無死(もしくは一死)三塁の場面でよく使われる。

相手は前進守備、ゴロが転がって普通にバックホームすれば、アウトになってしまうタイミングでもギャンブルスタートを切れば、内野ゴロでも貴重な1点をもぎ取ることが出来る。

もちろんライナーで飛び出してアウトになったり、ホームで憤死する可能性も高いとてもリスクのあるプレーである。

 

 

そう言う作戦こそ、対戦相手に敬意を持った(=相手の強さを認めた)上で、作戦を実行する。

「普通にやったら勝てない、“しでかしてやる”」と言うことなのだろう。

野球で実力差を推し量る時、打力や投手力が前提になる。

しかし、基本的には走塁や守備で奇襲作戦を行うことが多い。

先ほどの、ギャンブルスタートや重盗、守備では※ブルドックシフトや牽制のサインプレー。

※ブルドックシフト=相手が送りバントを試みる際に一塁手もしくは三塁手またはその両方が極端にチャージしてくること。

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そんな作戦を実行するチームに対しては、「なにかやってくるんじゃないか!?」と思わせることができる。

相手に執拗なプレッシャーをかけることが出来るし、ミスを誘発することにも繋がる。

 

これを僕はよく仕事に転用していた。

もちろん、1年に何回も使える訳では無いが、サラリーマンをやっていると、自分の立場が脅かされることが年に何回か訪れる。

 

上司との力関係や、部下との能力差を考えて、明らかに自分(達)が劣っていると感じる時や、普通にやっていたら状況を打開できないと感じたときには“しでかしていた”

栗山監督の言うように、うまく行くのはやっぱり、力関係をしっかり理解し、相手をリスペクトしている時だ。

そしてそれが、自分にとってどんな不都合な事(人)であってもまずはしっかり敬意を払うことだ。

そこからは飛び出しそうな心臓と向き合って、奇襲作戦を成し遂げることだ。

 

これは落合博満氏の『采配』の中に記述されていたことだが、“極論から物事を考える”ことからヒントを得ている。

そして、落合氏は「あり得ないと思った時点で次の知恵が出て来ない」と言うことも言っているが、これは栗山監督の言うことと共通している。

 

野球で言えば、内野フライが犠牲フライにならないかとか、一見あり得ないようなことも考えて、そこから知恵が生まれることもある。

 

仕事の話になるが、僕はどうやら良い意味でも悪い意味でも“しでかすキャラ”だったと後から仲の良い先輩から言われたことがある。

決して能力の高い訳では無い僕が、生きていくために“奇襲作戦”をしたことで周りにその印象を与えられれば、“しでかす”意味は存分にあったと言える。

 

栗山監督は12球団の監督を見渡しても、動きの早い監督だと思う。

これからシーズンが交流戦へ向かい、オールスターを挟んで後半戦に突入するとき、チームがどんな順位にいても、きっと良い意味で“しでかして”くれることを楽しみに今回の更新とする。

 

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