野球観術

野球や組織論はいつだって愛情から始まる

上沢の離脱が教えてくれること

6月18日の対DeNA戦で日本ハムの上沢が、ソトのピッチャー返しの打球を左膝に受けて担架で運ばれ、そのまま救急車で搬送。

診断は左膝蓋(しつがい)骨骨折、全治5か月と今季は絶望となった。

 

その日僕は外出をしていて、中継を見ていなかったが、TwitterやLINEで

「うわっちが…」

「上沢が担架で運ばれた…」

「これはヤバい…」

こんな情報が流れてきて何事かと動画を見ると、目を覆いたくなるような光景だった。

 

その日はプロ野球ニュースすら見る気分にもなれなかった。

 

栗山監督も診断結果が出る前に

「今いるメンバーがベストメンバーだと言う信念は変わらないけど……。(上沢離脱がチームに)痛い、痛くないの次元じゃない。次元が違い過ぎる。」

と言うコメントを残し、普段は気丈に振る舞う栗山監督も離脱の大きさを珍しく隠さなかった。

 

また、

「ナオに野球の神様は何を求めているのか……。」とも言っているが、僕からすると、

昨年、肘の手術から復活したばかりで、今度は膝の手術を余儀なくされ、それこそ『神も仏も無い』いったいどれだけ辛い思いをしないといけないのだろうと…

 

でも、シーズンは続く…

チームとしてどう戦っていくのか…

それぞれの立場とすればいろんなことを考える。

監督と投手コーチは抜けた分を“上沢の代わりは居ない”と言ってもやりくりをしなければならない。

そこで選手が何を思ってそれをどう表現するかと言う話になってくる。

 

以前に、世の中的には

心技体だが、僕の考えは体技心

と言うことを少し書いた。

 

始めにこの考えに触れることが出来たのは、落合博満氏の著書『采配』だった。

イップス”について書かれている内容で、“イップス”は医学的見地から認められたものであると前置きしたうえで、イップス”は治せると言うことを説明する際にこんなこと記述していた。

 

イップス”の原因は精神的なもので様々な要因があるが、“イップス”を治すためには、とにかく練習しかないと…

根性論的な話で今のご時世にはそぐわないかもしれないが、

練習をするには、その練習に耐えられるだけの体力や身体の強さがなければいけない。

まさにの部分だ。

その練習に耐えて、確かな技術を習得することで“イップス”は治せる。

その確かな技術がの支えとなり、改善されていくと言うような話だ。

 

最近、精神科医禅宗のお坊さんの考えに触れる機会があってそこでも

心技体では無く体技心だと言う話が出てきた。

 

うつ病患者や心に何らかの支障をきたした人には、まず軽い運動を勧めたり、姿勢を正すことを勧めるそうだ。

 

そこから、何かを始めたりして自分の中に何かを足していくと言う作業をすることで、回復を促すと言うことだが、作業の結果何かを身に着ける(=技術)と言うことなのだと感じた。

それこそ普通の人がしている、食事や睡眠をまともに取れない人が、何かをするようになると言うことは、ある意味何か(技術)を習得する感覚に似ているのかもしれない。

 

その小さな一つ一つの技術が自信となり心の病気から抜け出していく、もちろん投薬や好不調の波は前提としてはあるが、(心の病気であるにも関わらず)やはり最後に心が来るし、健康な人ですら心を変える(=自分の考えを変える)と言うことは並大抵のことでは無い。

やはり体技心の順番なのだと思う。

 

話は逸れたが、どんなにすごい選手、今回はエースと言われる上沢も身体を壊してしまっては何もすることが出来ない。

 

そして今の日本ハムに、元気に野球をすることはできるが技術的にその穴を埋めることのできる選手は居ない。

 

でも僕はこう考える。

上沢と言う選手よりもずっと野球の技術の高い選手が日本ハムには居ると…

投手で言えば金子弌大であり、野手で言えば中田翔だと思う。

彼らは長くプロ野球を戦って来た中で、多少の故障は持っているとは思うが、シーズンを戦うだけの体力は持ち合わせている。

 

そして技術面では、両選手とも申し分無い実績を誇っている。

選手層が若い日本ハムにあって、経験値も他の選手に比べれば圧倒的に多い。

いわゆる“術”みたいなものは持っているだろう。

 

しかし両選手とも、プロ野球の水に慣れてしまっていて“術”で野球をしている感が否めない。

 

チームとして体技心を備えているのは彼らであり、上沢が居ない分を頑張ることが出来るのは彼らしか居ない。

 

特に金子は、高い技術を持ちながら自分本位の投球スタイルでオリックスと言う弱いチームで勝ち星を重ねてきた。

でも今は、常にAクラスを争うチーム、そして大きな個の力に頼らずチームとして勝ちを重ねるチームに居る。

 

 

逆に、「上沢の分も頑張るんだ!」と思っても普通の選手では体力や技術が伴わない。

それを一軍と二軍を行き来している選手が遮二無二頑張っても、何かが変わる可能性は低い。

 

金子自身も年齢を重ね、過去の投球とは少しかけ離れてきているが、チームのためにと言う気持ち次第で、いくらでも周りに影響を与える存在であり、この悪い流れを払拭する投球が出来る力を持っている。

 

金子自身が苦しんでいるからこそ、チームのためにと言う気持ち(心の変化)が何かを変えるきっかけになると信じている。

 

僕としてはこの上沢の離脱の流れを変えることの出来る鍵を握っているのは金子弌大だと思っている。

 

その鍵は、どういう形で表現されるかは分からないが、そのためにファイターズと言うチームに来てくれたと信じている。

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チームは、秋吉、平沼の離脱、

交流戦で2カード続けての負け越しと、上沢の離脱以外にも悪い流れが続いている。

 

チームとして気持ち(心)が落ち込んでいる時、それを回復させることが出来るのは、確かな技術をもった金子や中田、そして田中賢のような選手であり、そこから清宮のような起爆剤が爆発することだと思う。

 

上沢の離脱が教えてくれることはたくさんある。

 

上沢はチームの命運を背負った開幕投手だ。

顔面蒼白になりながら、なんとか試合を作った開幕戦。

そこには明らかなエースの自覚が垣間見えた。

 

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ここまでチームのために苦労しながら積み重ねた5勝と言う数字。

 

これより彼の勝ち星が増えることは無いが、これから彼の存在がチームにそれ以上の勝ちをもたらしてくれるだろう。

上沢自身も、今はチームのためにではなく、家族のためにしっかり治してほしいと思う。

 

そして(ファンの力も含めて)

開幕投手をみんなで、優勝旅行に連れて行こう!!

 

北海道日本ハムファイターズとは、そういうチームだったと言えることを信じて今回の更新としたいと思う。

 

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