ファイターズ2019年を振り返る(①オープナー制度は成功だったか)
※長文注意
栗山監督の続投が決まり、戦力外通告やコーチ人事にもメスが入り始めている。
さて!今シーズンのファイターズを振り返ります。
昨年、ファイターズファンのメンバーとドラフト会議を見届けた後、ほろ酔いの帰り路で
「来年は木田GM補佐が投手コーチだな!」
と言う話をしていると、なんとそれが現実の話となった。
そんなファイターズは今年、他の球団に先行して、オープナー制度を導入し、シーズンを戦った。
①:ファイターズのオープナーは成功だったのか?
果たして、
ファイターズのオープナー制度は成功だったのか?
僕の答えは
NO!=失敗!!
それはチームが優勝出来なかったからだ!
“勝てば官軍負ければ賊軍”と言う言葉がある。
勝負に勝てば、道理にかなっていなくても勝ったものが正義と言うことを端的に表した表現だが、
ファイターズが今年の戦い方で、優勝していたらオープナー制度は成功。
栗山流オープナー・ショートスターターと言う単語がもしかしたら、流行語大賞にノミネートされていたかもしれない。
勝負の世界で勝利に導いた戦法は後世に語り継がれるのが歴史と言うものだが、2019年シーズンと言うファイターズの戦いの歴史の中で、オープナー制と言うのは失敗として記憶されるだろうと思う。
ここでお気づきの方が居るかもしれないが、それはあくまでも
2019年シーズンにおいてと言う話であり、
栗山流オープナーが道理にかなっていないかと言うとそれもまた違うと思う。
②:栗山流オープナーの概要
ファイターズがオープナー制度を採用することが予想されていたため、今年の1月にこのようなブログを更新していた。
このブログの予想と、ファイターズが採用したオープナーとは異なる内容となったが、そもそものオープナーについての説明としては、大きく相違ないと思うので、ご一読頂ければと思う。
通常のオープナー制は中継ぎ投手が先発して1イニングを投げ、従来の先発投手が2回から登板するのに対し、
ファイターズの序盤のオープナー制は相手の打順が一巡するまでは、オープナー投手が投げ、その後従来の先発投手が登板したり、ロングリリーフの投手が登板する傾向が強かった。
これが、ショートスターターと呼ばれるようになった。
先発が左の加藤だった場合、4回から右の金子弌大を投入したり、ロドリゲスと堀の組み合わせなど、いくつものバリエーションがあった。
それにより、ネットのデータ予測やテレビ中継で、1巡目の被打率、それ以降の被打率と言うあまりクローズアップされることの無かったデータが登場するようになった。
5月に入ると、有原・上沢の2本柱に、加藤が5回までを担うようになり、杉浦が中10日で5回までの登板、その合間をオープナーでローテーションを回す傾向にシフトする。
4月は先発登板だった、ロドリゲスも5月からは中継ぎ登板のみになった。
この時期、チームは“オセロファイターズ”と揶揄されるほど、白星と黒星を繰り返し、貯金1の壁をなかなか越えられない時期だった。
一時は連敗を喫し、借金が最大3まで膨らんだが、
開幕投手の上沢が5月26日の対ライオンズ戦で7回123球7回4失点
の力投で連敗を止めると、
引き分けを挟んで6連勝し交流戦に突入、
6月14日(有原が8回112球7安打3失点)の時点で貯金は8になった。
ここまでは栗山流オープナーが、うまく機能していた感があった。
しかし、あの悪夢がファイターズを襲う・・・
6月18日のDeNA戦で上沢がソトの打球を膝に受け、今シーズン絶望となった。
この出来事が栗山流オープナーの潮目だったと思う。(詳細は後述)
上沢が抜けた分は、浦野・吉田侑・村田のショートスターターで乗り切ろうとしたが、悉く黒星がついた。
この時期は比較的打線が活発で、上沢ショックが和らいだ後は、チームには勝ち星が付いたが先発投手のイニング数が急激に減り始め、中継ぎ陣の疲労が蓄積し始めた時期だった。
そして、今年もう一つの悪夢が7月28日の対ライオンズ戦のサヨナラ負け・・・
この日を境目に、先発投手の防御率が急騰し始める・・・
堀を中1日でオープナーで先発させたり、ロドリゲスを先発に戻すなど、手を尽くすも最大8連敗を含む8月は5勝20敗1分と大失速・・・
7月27日時点であった10の貯金は、まさに坂道を転がり落ちるように減っていき、8月末には借金6に・・・
9月は通常の先発ローテーションの中に若手を組み込む形にしたが、先発投手が悉く先取点を許す展開になり、クライマックスシリーズの進出は叶わなかった。
③:栗山流オープナーの感想
僕は今年の栗山流オープナーを語る時に、野球の大きな二つの要素が、どのような形で結果として出るのかを意識していた。
第1回目のブログで更新した
野球は確率のスポーツであり
流れのスポーツである
と言うこのブログのコンセプトになっている要素だ。
確立の側面から行くと、上記でも述べた一巡目の被打率とそれ以降の被打率を見たときに、一巡目に強い(二巡目以降に弱い)投手から中継ぎに繋ぐことで、相手打線を抑える確率と言う側面。
逆に、好投している投手をスパッと変えて、試合の流れを止めてしまうと言う側面。
この相反する側面を考えたときに、みなさんはどちらが勝ちに近づくと考えられるだろうか?
僕個人的な見解は
「単純に勝つのであれば、確率を突き詰めた方が勝つ確率は上がる」
と考える。
単純にと言うのは、確率通りにある程度(攻撃も含め)試合が進むと言うことだ。
印象に残っているのは、ショートスターターの投手が無安打に抑えて、2番手で出てきた金子弌が打たれるケース、逆に本来長いイニングを投げる金子弌が先発して5回を目途にしていても、4回までに降板してしまうようなケースが非常に多かったことだ。
これは確率論的(彼の過去の防御率や実績)には勝つ確率は高いと言えるが、
金子弌が本来持つ特性(先発で試合を作る)と言う、確率とは違った特性がでてしまったがために、負けに繋がってしまった感は否めない。
こう言うことが序盤のオセロファイターズに直結したと言えるだろう。
逆にロドリゲスの登板を振り返ると面白いことが分かった。
4月は先発登板で
5月1日~8月11日の間は、全て中継ぎ登板、
その期間は5勝2敗8H1Sの成績だった。
中継ぎに転校してから(5月1日~)
7月3日までは全て1イニング
7月30日までは全て最大3イニング
8月11日までの2回の中継ぎ登板は5イニング
そこから先発に戻って5イニングと徐々にイニングを長くしていった。
最後まで適正を探りながら、ショートスターターを担い先発に戻った格好になった。
その結果、以下のような傾向が出た。
こうやって、今年は特性も含めて、確率を蓄積していく部分も大きくウェートを占めた。
一方で、流れの要素においてはどうか?
上記で、栗山流オープナーの潮目だったと言った上沢のケガから僕は、
長いイニングを投げる投手が作り出す流れ
と言うのは絶対的に必要だ(存在する)と感じた。
「この投手なら7回くらいまではゲームを作ってくれる」と言う野手のリズムは絶対的に存在する。
上記概要でも、あえて記したが、悪い流れを止めたり、連勝の流れを作っているのは、やはり、上沢と有原だった。
のブログで、先発投手がしっかりしていること、
それがファイターズが優勝できると確信する理由だと力強く述べたが、6枠の先発のうちせめて2枠がオープナーかと思いきや、(加藤・杉浦を含め)まさか5枠もオープナーを使うハメになったことを考えると、今年のやりくりは逆にすごかったと言える。
そんな今年のファイターズ投手陣の表のMVPは最多勝の有原として、
裏のMVPは玉井だと思っている。
一度も登録を抹消されることなく、
リーグ3位の65試合に登板し
防御率2.61 ※WHIP1.21
特筆すべきは被本塁打が1と言うすばらしい数字を残した。
※WHIP=(被打率+与四球)÷投球回:1イニングあたりに何人の走者を出したかと言う指標
僕はこのWHIP(ウイップ/ダブリュー・エイチ・アイ・ピー)と言う数字を好き好んで使う。
特にオープナーの後に細かく繋ぐ投手が、毎回たくさんの走者を背負ってしまっては、試合が間延びしてしまい、攻撃への流れが作れないし、走者がでれば失点の確率が自ずと上がってくるからだ。
玉井を始め、公文や石川直のように60試合を越える登板数をこなした投手が居ることで今年のオープナーは成り立っていたが、来年も同じ使い方が出来るはずもない。
④:来年への展望
オープナー制を成功させるためには、先発投手で7回くらいまでしっかり投げられる投手がローテーションの過半数居ることが絶対条件と思う。
(先発投手が居ないからオープナーを使うと言う見方もあるが…)
ファイターズと言うチームは他のチームに先駆けて、オープナー制と言う仕組み作りを試みた。
来年もオープナー制を使いながら戦うと栗山監督が公言しているが、単純な結果もそうだが特性から来る確率も含めて、後ろの投手が酷使されない仕組み作りが必要と考える。
先発投手がここまで不足した年が逆にオープナー元年で、見えてきたことは、たくさんあったのではないだろうか。
果たして来年はどんな形で栗山流オープナーのタクトは振られるだろうか?
長文にお付き合い頂き本当にありがとうございました。
次は
2番大田泰示とアナリスト野球
をテーマに振り返ります。