辻監督の涙
「悔しいです…」
メットライフドーム、クライマックスシリーズでソフトバンクに敗れ、最終戦セレモニーの際、涙で声が出ず、絞り出すように出した言葉は辻監督の心中を物語っていたと思う。
僕も、歳のせいかもらい泣きをしてしまった。
涙ぐましい努力とは辻監督のことなのかもしれない。
それは、辛い思いをしたことを美化したり、正当化したりすることでは無い。
(僕は晩年のヤクルトの記憶しかないんだけどね…)
献身的な右打ちと、スキのない走塁、そして堅実な守備(8度のゴールデングラブ賞)で、森祇晶監督の管理野球を支えた。
緻密な森野球のお手本のような選手だった。
そんな辻監督のイメージとは違うチームが今年の西武ライオンズだった。
とにかく打ち勝つ野球で優勝を成し遂げた。
辻監督が就任したのは、昨年の2017年シーズンから。
近年の西武ライオンズは、打撃はすごいが、内野手の守乱が原因で接戦を落とすことが多かった。
打ち勝つことの多かった今年のライオンズだが、実はこんな数字がある。
☆
取って付けたような数字だが(笑)失策数は就任後に改善され、特に内野手の失策数は2018年、大幅に改善された。
昨年、源田がトヨタ自動車からドラフト3位で入ってきて、辻監督はショートで開幕から起用し、長年固定できなかったショートをシーズン通して起用し続けた。
これによってライオンズの内野はかなり安定した。
源田に関して言えば、失策数は昨年の21→11個と大幅に減り、刺殺、補殺ともに40以上増えている。
いかに源田の守備力が、チームに貢献しているかがわかる。
内野手の失策数が2年で24個も改善されているのも辻監督の方針のたまものだと思う。
そしてもう一つ、こんな数字が。
☆
盗塁数も明らかに増えている。
微々たる数字かもしれないが、走れる(盗塁できる)選手と言うのは限られているので、この数字も監督の考えが反映されていると思う。
これも源田の功績が大きいとは思うが…
そしてその反面、緻密な野球を推し進めることを断念し、チームの長所を生かそうとする姿勢が、このチーム犠打数に現れている。昨年の半分以下とは本当に驚きだ。
強打の裏側には辻野球が隠れていた訳だ。
データとして一部を取り上げたが、こんなエピソードがある。
辻監督が自宅で、息子さんに試合のビデオを見せて「こいつら(選手)は本当にすごいんだ。」と笑顔で話すことがあると言う。
現役時代は、投内連携で若い選手を怒鳴ることもあったと言う父を見て「変わったな」と息子さんは思われたそうです。
森監督の厳しい管理野球をそのまま若い選手に強要することなく、言葉は適切か分からないが性善説で選手と接している何よりの証拠だとその記事を読んで感じた。
管理野球で育って、バントや盗塁を絡めていやらしい野球を展開したい気持ちもあると思うが、長所を生かそうと、バントをせず、選手たちのバッティングを信頼して打たせた。
不要な緊張感をあおることなく、伸び伸び野球をやらせているのは、テレビ越しでも伝わってきた。
なかなか出来ることでは無いと思う。
そんな、信頼している選手が失敗をすることだって多くあると思う。
そう言った選手を信じ続ける心中は想像を絶する忍耐だと思う。
本当に涙ぐましい努力だと尊敬する。
そんな選手たちがペナントレースを制した。どんなに劣勢でも諦めない選手たちは監督の目には頼もしくも映ったと思う。
そんな“チーム”がCSの舞台で敗れた…
組織のトップの愛情はきっと身を結ぶ。
それは一部のデータとしても、優勝と言う結果となって表れる。
辻監督の涙、“悔しさ”それはきっと選手への愛情の裏返しだったのではないだろうか。