野球観術

野球や組織論はいつだって愛情から始まる

アリガトウ! Brandon Laird!!

 

先日、ファイターズのブランドン・レアード内野手が球団との交渉を打ち切り、正式に退団と報道されました。

 

以前こんなブログを書いた↓

 

saiyuki6.hatenablog.jp

 

 

この中で、マルティネス・レアードの両外国人の残留は厳しいと言うことを記述した。

そして、その数日後に金子弌大との契約が決まった。

 

この時にふと思ったのは、これでもしかしたら、マルティネスとは再契約をするかもしれない!その分レアードとの再契約は厳しいのではないかと…

 

今年のペナントレースは打高投低の傾向が強く、そう言うチームがリーグを制した。

ともあれば、レアードを残してマルティネスを諦めると言う選択肢ではあるが、あくまでもファイターズは投手を中心とした守りのチームである。

それを考えると、本気で優勝を狙うとしたら、マルティネスの選択肢が高いのではと感じたのだ。

 

そしてマルティネスとは契約をしたが、レアードとの交渉を打ち切った…

 

 

◇記憶にも記録にも残る選手◇

退団が決まったレアードはチームにかけがえのない思い出を残してくれた。

今やファンで知らない人は居ない“スシポーズ”、ヒーローインタビューで「そうですねぇ」とおどける姿、ファンの心に多くのものを刻んでくれた。

思い出だけでなく、2016年の優勝の時には、ソフトバンクとの天王山では、特大の1発、優勝決定の試合では、大谷の神がかり的な投球に際して、レアードのホームラン1本で決着するなど、シーズン39本塁打を放ち本塁打王に輝き、優勝に大きく貢献した。

 

まさに、記憶にも記録にも残る助っ人外国人だった。

 

◇来日1年目の苦悩◇

レアードに関しては、えのきどいちろうさんの手記で僕と同じことを書いていたのを見て驚いたが、

https://www.baseballchannel.jp/npb/59350/

来日1年目のレアードはまさに、一緒に来日したハーミッダとの比較論では、“ダメ外人”だった。

結果は、上記貼付のブログか、えのきどいちろうさんの手記を読んで頂ければと思う。

 

彼が不調な時に、当時の白井ヘッドコーチがお寿司屋さんにレアードを連れて行った時のエピソードは有名な話だが、

「レアード、お前は力みすぎだ。寿司は軽く握らないとおいしくない。おまえのは力が入りすぎているから、寿司ポーズでもやって、リラックスしたらどうだ?」

「打席に入る前に寿司ポーズは出来ないから、俺がコーチャーズボックスからやってやるから力むなよ!」

※『北海道日本ハムファイターズ流 一流の組織であり続ける3つの原則 白井一幸』より抜粋

寿司屋の大将と白井ヘッドとのやり取りで、あの“スシポーズ”が生まれ人気選手へとなっていった。

レアード本人が話していたが、スタンドからの「ホームラン、ホームラン、レアード!」のコールは好きでは無かったと言う。

「毎打席ホームランなんて打てないよ」と思っていたらしい。

明るい性格ではあるが、来日1年目はそんな環境の変化と周りからの期待から、力みまくっていたのだろう。それが、序盤の2割を切る打率に表れていた…

 

◇代えの利かない守備力◇

彼は、来日1年目に9番と言う打順も経験している。それでも、栗山監督は使い続けた。

このまま行ったら、守備固めでも1軍に残すのではと思うほどだった。

それだけ、守備は安定していた。

それまで、サードは今年引退した小谷野栄一が守っていたポジションだった。

彼がレギュラーを掴んでからの守備力が安定していただけに、その水準に達している三塁手が居なかった。レアードはそれに負けずとも劣らない、グラブのハンドリングと自分の守備範囲はしっかりアウトにすることのできる選手だった。

栗山監督は著書の『未徹在』の中でこんなことを書いている。

「守備がうまい選手は必ず打てるようになる」

詳細は著書を読んで頂ければと思うが、打撃が良くても守備はうまくなるわけでは無いと言うことも言っている。

栗山監督は、「レアードの明るさをかって、スタメンから外さなかった。」と言っていたが、実はこの信念がレアードの起用にはあったのではないかと思う。

代えの利かない守備力と栗山監督の持論が、レアードに多くの打席機会を与え、本塁打王へと成長した一つの側面であると僕は考える。

 

◇打てのサインで待てる◇

これは裏付けるデータが手元に無いので、なんとも言えないが、レアードと言う選手は、本当に勉強家だと思うことがあって、決して難しいボールをヒットにしたり、ホームランにしている訳では無いと言うことだ。

基本的には、真ん中高めの半速球(変化球の抜け球など)をホームランすることが多いが、投手もそこに投げたら打たれるのは分かっている。

レアードは投手の配球を研究し、難しいボールに手を出さないことで、自分の得意なボールを投手に投げさせていた印象だ。

 

来日1年目や不調時には、外角のスライダーを追いかける癖を見ると、選球眼がもともと良いわけでは無いことが分かる。

 

いかに自分が、ホームランできるボールを投げさせるか、そしてある程度長距離砲の立ち位置を得ると、投手の失投を迎え入れるようなスイングで、ホームランを量産していった。

 

外国人には基本的には打てのサインしか出ないが、ボールを待つための努力を、僕はものすごく感じる選手であった。

 

◇東京ドームダイスキ◇

レアードは東京ドームでの試合はよく打った。

本人もヒーローインタビューで言う「東京ドームダイスキ!」だ。

狭い球場でホームランが出やすいと言うこともあるだろうが、とにかく打っているイメージだ。

正確な数字は分からないが、打率は相当良かったのではないか。

本塁打だけでなく、単打や大事な場面でのタイムリーも多くあった。

 

これも、フルスイングしなくても本塁打になるため、楽な気持ちで打席に入れていた証拠だろう。

彼はいつだって、ファンの期待に応えようと常に頑張る選手であったことがわかる。

スシポーズと東京ドームダイスキは、彼の力みやすい性格を表したものなのかもしれない。

 

 

◇チームを去ること◇

彼はファイターズと言うチームを去ることになった。

 

彼がファイターズに残した功績は大きい。

 

彼が居ないのは寂しい。

 

彼はきっとファイターズでの経験を生かして成功するだろう。

 

彼はきっとなんらかの形でファイターズに戻って来るだろう。

 

守備固めを必要としない長距離砲を失ってでも、

ファイターズと言うチームは前へ進んでいく。

 

ありがとう!ブランドン・レアード!!

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