野球観術

野球や組織論はいつだって愛情から始まる

どくしょかんそうぶん その2 ㊤

久しぶりに出会いました!

最高の1冊!!

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“わんぼーろん”ならぬ“さんぼーろん”

著者の橋上秀樹氏はファイターズにも在籍し、左投手が出てきた時の“右の代打”として活躍。

僕が子供の頃は、左投手が予告先発の時にしばしばスタメンで出場し、現在「敵の野手の間を抜く気合の決勝打~♪」のチャンテが個別の応援歌で使われており、歌うのをすごく楽しみにしていた。

 

話は逸れたが

『参謀論』

参謀=高級指揮官の下で、作戦・用兵などの計画・指導を受け持つ将校。

   転じて一般に、人を支えてあれこれ策略を立てる人の意。

 

ちなみに“謀(はかりごと)”=ものごとがうまくいくように前もって考えておく手段。計略。もくろみ を意味する。

 

野村克也氏・落合博満氏・栗山英樹氏 おもに監督の本を愛読しているが、実際に僕自身は根っからの“参謀タイプ”で平成の野球界で“The参謀”であった橋上氏の著書をずっと待ちわびていたのだ。

 

字の如く決して良い印象では無い“謀(はかりごと)”をいかにもしそうな顔ですよね(笑)

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僕も仕事を始めとして集団の中においては、優秀なトップであればあるほど、参謀として力を発揮するタイプであり、大げさな話だがこの本の各章、各項に対して一つ一つコメントをしたいと思うほどの内容だった。

 

僕の性格が“腹黒い”と思われようとも、組織のため、またそのリーダーのため、もしくはそれが個人に対する場合もあるが、このブログのサブタイトルの通り、そこには“愛情がある”からと言うことを読み取って頂けると幸いであるが、いろんな項目に分けて感動や自分の実体験を書いていきたいと思う。

 

 

~鉄拳制裁から言葉の力へ~

 

体育会に蔓延る鉄拳制裁。僕も社会人になって何度か、いわゆる鉄拳制裁を受けたことがある。

橋上氏も先輩から鉄拳制裁を受け、選手(部下)にも鉄拳制裁を見舞ったことがあると記している。

西武の1軍コーチに就任した際は、球団関係者から「選手を指導する際には『言い方』に気を付けて下さい」と言われたそうだ。

 

実際に手足を出さなくても、言い方次第では、言葉の暴力として選手が受け取ることがあると言うことを、西武の球団関係者は分かっていたのであろう。

デーブ大久保の件もあったしな…)

 

一般社会にも野球界にも自分の経験を部下に押し付けて暴力や暴言を吐く上司は少なくない。

これが今やパワハラに該当し、上司と部下の関係において大きな問題になっている。

橋上氏も同じ認識だった。

 

選手をしっかり見る観察眼に加え、自分の経験だけに寄らない、言葉の力を使って、指導をしなければ選手自身が納得してその助言に耳を貸さない。と言うことを西武でのコーチ経験、現在のヤクルトの2軍チーフコーチに就任する際に受講した研修で身を持って感じたと言う。

 

僕がもっとも賞賛したいのは、昔の考え方から現在の考え方にシフトすることの出来た、橋上氏の頭の柔らかさだ。

自分が受けた経験は大概の人は、自分もしてしまうものだ。

僕も決して例外では無かったのでそれは痛いほど分かる。

怒鳴られたり、嫌味を言われることが嫌だったにも関わらず、部下に同じことをしてしまったことは1度や2度では無い。

僕自身、年齢の下の女性社員に向かって、物を投げつけたり、怒鳴りつけて周りの物を蹴り飛ばしたり、今考えれば恥ずかしい話だが、そう言う経験が、結局は反発招くだけと言うことを逆に教えてもらった気がする。

(この社員が別の店舗に異動した先で、自分のことを怖いと言っていたそうだが、その異動先で僕も働く機会があって、その職場の人たちに(そんな風には見えないと)驚かれたが、それは僕自身が変わることができた何よりの証だと感じた。)

 

それでも言葉の力で何かを理解してもらうことはとても難しい。

この“理解してもらう”と言う表現もとても大切で、“理解させる”ではやっぱりダメなのだ。

縦割りの社会において、こんな優しい表現で良いのかとよく言われるが、著書の中にこんな記述があった

 

『「今の時代の選手に寄り添った方がいい」と言う思いが決定的になったのは、辻発彦監督が(西武の監督に)就任した2017年シーズンからである。辻監督に関しては、「選手に対して厳しく指導にあたる人」と言う噂はすでに耳にしていた。どちらかと言えば、私(橋上氏)の考えに近しい部分があるのではないかと思っていたが、実際に選手との接し方を見ると、辻監督も選手に寄り添う姿勢で指導をしていたのである。』

 

『不振が続いている選手に対しては、辻監督は(選手を)西武第二球場に呼び出し、自ら打撃投手を務め選手の打撃フォームをチェックすることもあった。「こちらが見ておかないと、何がどう変化したかが分からない」と言うのがその理由だった。「ダメだったときにどう対処すればいいのか」を選手とお互いに話し合う。そうすることで欠点を修正していく。(略)私(橋上氏)も辻監督から自分自身を変化させることをまず求められた。』

 

何かを指導するにせよ、選手に寄り添うと言う態度を見せることで、初めて言葉の力が発揮される。指導者(上司)が選手(部下)のことを見ていなくて、小手先の言葉で選手を動かそうとしても無理だと言うことを、辻監督は身を持って示した。橋上氏もそのことを痛感し、指導に生かしたと言う。

 

僕も上司の立場になった時「下っ端の時に散々使われたのだから、部下を使って仕事を完遂しなければいけない。」と言う考えはすぐに消さなければならなかった。

僕が居る業界は慢性的な人手不足で、仕事のやる気がある人なんて入って来ないのだ。

 

お世話になった上司に言われたのは「これ以上今の環境が良くなることは無い!お前が良くすること以外にどうもならないぞ!」と

 

結局、そういう人に寄り添って行くことでしか解決方法が無いのだと気づかされたのだが、それも上司(橋上氏の立場で言えば辻監督)が身を持って示してくれたことが何より僕の考えを変えてくれる手助けとなった。

 

先ほど登場した女性社員に対しても、その子の“趣味の話”をしたり(分からなければ調べる)、して、その例え話を仕事の中に混ぜて行く。時には、手を抜くことを許したりしながら、寄り添う中で初めて言葉を使う段階になってくる。

“理解してもらう”と言う表現はそんな僕自身の経験からも、どうしても必要な言葉の使い方になっているが、その背景には本音からそう思わなければ、若い人とは仕事ができないと言う苦い思いがあったからだ。

 

この本のサブタイトルにもなっている

プロ野球最強コーチの「組織と人を動かす」言葉~

 

も中身を読んでいくと、言葉にたどり着くまでに必要なことがたくさん書いてある。

 

次回はそんなプロ野球選手に伝えた言葉について更新をしていこうと思う。